三六協定による時間外・休日労働(法36条)
■三六協定
1)三六協定の締結・届け出(法36条1項)
「使用者は、労使協定をし、これを行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出た場合においては、法定の労働時間又は法定の休日に関する規定にかかわらず、その協定で定める所によって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」とされる。
つまり、三六協定は、その締結・届け出により、時間外労働または休日労働をさせても、法32条(法定労働時間)や法35条(法定休日)違反の罰則の適用を受けないとする効力(「免罰的効力」)を持つ。
※派遣労働者の場合は、派遣元の使用者が派遣元事業場の労働組合などと三六協定を締結しなければならない。
2)三六協定の締結相手(則6条の2,1項、3項、平成11年3月31日基発169号)
三六協定は、「労使協定」なので、その事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(それがない場合は、労働者の過半数代表者)と「書面」により締結しなければならない。
なお、「過半数代表者」は、事業場に管理監督者しかいない場合を除き、管理監督以外の者の中から、法に規定する協定などをするものを選出することを明らかにして実施される投票、挙手、労働者の話し合い、持ち回り決議などの民主的方法による手続きにより、選出される必要がある。
※使用者は、労働者が過半数代表者であることもしくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取り扱いをしないようにしなければならない(則6条の2,3項)。
3)三六協定の締結事項(則16条)
三六協定には次のことを定めなければならない。
1:時間外又は休日の労働をさせる必要のある具体的事項
2:業務の種類
3:労働者の数
4:1日及び1日を超える一定の期間(1週・1月・1年など)についての延長することができる時間又は労働させることができる休日
5:協定の有効期限
※三六協定では、原則として、「1年」についての延長時間は必ず定め、その有効期間を1年以上にしなければならないが、「1週や1月など」の延長時間は任意に定めればよく、その有効期間を1年以上にしなくてもよい。
4)三六協定の更新(則17条2項)
三六協定を更新しようするときは、使用者はその旨の協定を所轄労働基準監督署長に届け出ることによって、三六協定の届け出に変えることができる、
※三六協定に定めた限度を超えて時間外・休日労働をさせることは、災害又は公務による臨時の必要がある場合のほかは、たとえ労働者の同意があっても違法行為である。
■労働時間延長の限度基準(法36条2項~4項、平成21年厚労告316号)
「厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、三六協定で定める労働時間の限度、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向、その他の事情を考慮して基準を定めることが出来る。三六協定をする労使当事者(使用者および労働組合または過半数代表者)は、当該協定で労働時間の延長を定めるにあたり、当該協定の内容がこの基準に適合したものとなるようにしなければならない。行政官庁は、この基準に関し、三六協定をする労使当事者に対し、必要な助言及び指導を行うことが出来る」とされる。
具体的には、三六協定で定める労働時間の延長時間(時間外労働時間)は、原則として次表の限度時間を超えないものとしなければならない。
1週間:15(14)時間
2週間:27(25)時間
4週間:43(40)時間
1ヶ月:45(42)時間
2ヶ月:81(75)時間
3ヶ月:120(110)時間
1年間:360(320)時間
注:()内は、1年単位の変形労働時間制により労働する労働者(対象期間が3ヶ月を超えるものに限る)についての限度時間
※労働時間の延長の限度に係る基準に適合しない協定が無効となるわけでも、その協定を所轄労働基準監督署長が当該基準に適合したものに変更できるわけでもない(助言・指導が行えるに過ぎない)。
■特別条項付き協定(平成21年厚労告316号3条但書)
三六協定には、当該協定で、時間外労働時間の限度基準に定める限度時間(以下単に「限度時間」)以内の時間で一定期間についての延長時間(原則となる延長時間)を定めていることを前提として、限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情(臨時的なものに限る)が生じたときに限り、当該一定期間ごとに、労使当事者間において定める手続きを経て、限度時間を超える一定の時間(特別延長時間)まで労働時間を延長することが出来る旨及び限度時間を超える時間の労働時間にかかる割増賃金の率を定めておくことができ、この競艇のことを一般に「特別条項付き協定」という。
※労使当事者は、特別延長時間まで労働時間を延長することが出来る旨を定めるにあたっては、当該延長することが出来る労働時間を出来る限り短くするように定めなければならず、また、限度時間を超える時間の労働にかかる割増賃金の率を定めるにあたっては、これを2割5分を超える率とするように定めなければならない(平成21年厚労告316号)。
■有害業務の時間外労働制限(法36条1項但書)
三六協定による場合であっても、「坑内労働その他所定の健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない」とされる。
※変形労働時間制によりその日の所定労働時間が10時間であった場合には12時間まで有害業務に従事させることができる。