社会保険労務雇用関連疑問悩み問題解決

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賃金支払5原則(法24条)

 賃金は、「1:通貨で、2:直接労働者に、3:その全額を、4:毎月一回以上、5:一定の期日を定めて」支払わなければならないことになっており、これを賃金支払5原則という。もっとも、学習する上で大切なのは、この5原則の「例外」を理解することにある。

 

通貨払いの原則(法241項)

 「賃金は、通貨で支払わねばならない。ただし、法令もしくは労働協約に別段に定めがある場合又は一定の賃金について確実な支払の方法で一定のものによる場合においては、通貨以外のもので支払うことができる。」とされる。したがって、つぎの2つの場合には、賃金を通貨以外のもので支払うことができる。

1.法令もしくは労働協約に別段の定めがある場合>

 現在のところ法令で定められているものはないので、通勤定期乗車券のような現物給与を支払う場合には、労働協約に定めることが必要になる。

2.一定の賃金について確実な支払の方法で一定のものによる場合>

 使用者は、労働者の同意を得た場合には、次の方法により賃金を支払うことができる。

1:賃金及び退職手当の支払について、労働者が指定する銀行、郵便局などの金融機関に対する労働者の預金もしくは貯金への振り込み、又は、労働者が指定する証券会社に対する当該労働者の預かり金への振り込みによること

2:退職手当の支払について、銀行振出小切手、銀行支払保証小切手、郵便為替を交付する方法によること

 ※口座振込みを行えるかどうかは労働者本人の同意があるかどうかによる。労使協定があるかどうかによるのではない。

 

直接払いの原則(法241項前段)

 「賃金は、直接労働者に支払わなければならない。」とされる。したがって、賃金を、労働者の代理人、賃金債権の譲受人などに支払ってはならない。ただし、本人が病気であるときなどに妻子などの使者(賃金を本人に支払うのと同一の効果を生ずる者)に支払うことは差し支えない。

 

全額払いの原則(法241項)

 「賃金は、その全額を支払わねばならない。ただし、法令に別段の定めがある場合は又は労使協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。」とされる。この「控除」には、「相殺」を含むものとされており、使用者が労働者に対して有する債権(例えば、労働者が使い込んだ出張旅費など)と賃金とを、使用者側から一方的に相殺することは許されないとされている。また、次の2つの場合には賃金の一部を控除して支払うことができる。

1.法令に別段の定めがある場合>

 所得税や地方税の源泉徴収、社会保険料の源泉控除などのこと

2.労使協定がある場合>

 購買代金や社宅費・寮費・組合費などを賃金から控除するためには、労使協定を締結する必要になる。なお、当該労使協定を行政官庁に届ける必要はない。

 ※労使間の合意によって使用者が労働者に対して有する債権と労働者の賃金債権を相殺することは、それが労働者の完全な自由意志によるものであるかぎり、全額支払いの原則に違反しない。

 

毎月1回以上払い及び一定期日払いの原則(法242項、則8条)

 「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時の賃金などについては、この限りではない。」とされる。具体的には、次の「臨時の賃金など」については、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなくても差し支えない。

1:臨時に支払われる賃金

2:賞与

3:1ヶ月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当

4:1ヶ月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当

5:1ヶ月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当

 

 ※たとえ年俸制の場合であっても、賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払う。