社会保険労務雇用関連疑問悩み問題解決

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通勤災害

通勤災害の認定(法71項、2項)

 「労働者の通勤による負傷、疾病、障害または死亡」を「通勤災害」という。ここで、「通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする」とされる。

1:住居と就業場所との間の往復

2:所定の就業場所から他の場所への移動

3:1:の往復に先行し、または後続する住居間の移動であって所定の要件に該当するもの

 以下、「通勤」と認定されるための要件を順に後述する。

 

1)通勤によること

 「通勤による」とは、通勤と相当因果関係のあること、すなわち、通勤に通常伴う危険が具体化したことをいう。

 

2)就業関連性があること

 「就業に関し」とは、住居と就業場所との往復行為が業務につくためまたは業務が終了したために行われるものであることをいう。したがって、一般に早出、遅刻、早退の場合であっても通勤災害の対象とされるが、たまたま私生活上必要などの理由で住居と就業の場所との間を往復するような場合は通勤災害の対象とされない。

 なお、サークル活動や組合活動などで始業時刻より早めに出社したり、終業時刻より遅れて退社する場合も、その活動が、就業と通勤との関連性を失わせると認められるほど長時間(概ね2時間超)となる場合を除き、通勤災害の対象とされる。

 

3)次のいずれかに該当する移動であること

1.住居と就業場所との間の移動>

 「住居」とは、労働者が移住して日常生活の用に供している家屋などの場所で、本人の就業のための拠点となっているところをいう。したがって、単身赴任などで、帰省先住居(家族の住む自宅)とは別の赴任先住居(一人で住むマンションなど)を借りている場合は、その赴任先住居のほうが「住居」となる。ただし、帰省先住居からも通勤することに「反復・継続性」が認められる場合(月末・週末帰宅型通勤)は、赴任先住居と帰省先住居の双方が「住居」と認められる。

 また、ストライキや台風などのために臨時にホテルに泊まる場合のように、やむを得ない事情で就業のために一時的に住居の場所を移していると認められる場合は、その宿泊場所も「住居」と認められる。

 次に、「就業の場所」とは、労働者が業務を開始しまたは終了する場所をいうが、会議・研修などの会場や会社の行う行事の現象なども含まれる。

 最後に、「往復」とは、不特定多数のものの通行を予定している場所での往復をいう。例えば、出社しようとしていたといっても、一戸建ての屋敷構えの住居の玄関先で事故が発生した場合は、今だ「住居」での事故であり、「往復」とは認められない。

 

2.厚生労働省令で定める所定の就業の場所から他の就業の場所への移動(則6条)>

 「厚生労働省令で定める所定の就業の場所(複数の事業場に就業する労働者が事業場間を移動する場合の起点となる就業の場所)」とは、次の場所をいう。

1:労災保険の適用事業及び労災保険の保険関係が成立している暫定任意適用事業にかかる就業の場所

2:特別加入者(通勤災害精度が適用されないものを除く)にかかる就業の場所

3:その他1:2:に類する就業の場所

 また、他の就業の場所(移動の終点となる集魚の場所)は、労災保険の通勤災害保護制度の対象となる事業場に限る。これは、複数の事業場間の移動は、その移動の終点たる事業上において労務の提供を置こなうために行われる通勤であると考えられているため。したがって、その移動の間に起こった通勤災害に関する保険関係の処理については、終点たる事業場の保険関係で行うこととされている。

 ※他の就業の場所から厚生労働省令で定める就業の場所への移動は、必ずしも、労災保険法上の通勤となるわけではない。

 

3.住居と就業の場所との間の往復に先行し、または後続する住居間の移動であって所定の要件に該当するもの(則7条)>

 この要件に該当するためには、まず、当該移動を行う労働者(単身赴任者など)が、転任に伴い、当該転任の直前の住居(以下「帰省先住居」)と就業の場所との間を日々往復することが当該往復の距離などを考慮して困難となったため住居を移転(以下「赴任先住居」)した労働者であって、次のいずれかに該当するものではなければならない。

1:次の「やむを得ない事情」により、帰省先住居に居住している配偶者と別居することとなったもの

 <1>配偶者が、要介護状態にある労働者または配偶者の父母または同居の親族を介護すること

 <2>配偶者が、学校などに在学し、または職業訓練を受けている同居の子(18歳に達する日以後の最初の331日までの間にある子に限る)を養育すること

 <3>配偶者が、引き続き就業すること

 <4>配偶者が、労働者または配偶者の所有にかかる住居を管理するため、引き続き帰省先住居に移住すること

 <5>その他配偶者が労働者と同居できないと認められる<1>から<4>までに類する事情

 

2:次の「やむを得ない事情」により、帰省先住居に移住していること別居することとなったもの(配偶者がないものに限る)

 <1>当該子が要介護状態にあり、引き続き当該転任の直前まで日常生活を営んでいた地域において介護を受けなければならないこと

 <2>当該子(18歳に達する日以後の最初の331日までの間にある子に限る)が学校などに在学し、または職業訓練を受けていること

 <3>その他当該子が労働者と同居できないと認められる<1><2>に類する事情

 

3:次の「やむを得ない事情」により、帰省先住居に移住している当該労働者の父母または親族(要介護状態にあり、かつ、当該労働者が介護していた父母または親族に限る)と別居することとなったもの(配偶者及び子がないものに限る)

 <1>当該父母または親族が、引き続き当該転任の直前まで日常生活を営んでいた地域において介護を受けなければならないこと

 <2>当該父母または親族が労働者と同居できないと認められる<1>に類する事情

 

4:その他1:3:に類する労働者

 

 また、この要件に該当するためには、帰省先住居への移動に反復・継続性が認められ、かつ、住居間の移動が次の要件を満たすものでなければならない。

1:帰省先住居から赴任先住居への移動の場合にあっては、業務につく当日またはその前日に行われたものであること。ただし、交通機関の状況などの合理的理由があるときに限っては、その前々日以前に行なわれたものであっても良い。

2:赴任先住居から帰省先住居への移動の場合にあっては、業務に従事した当日またはその翌日に行われたものであること。ただし、交通機関の状況などの合理的理由があるときに限っては、その翌々日以後に行われたものであってもよい。

 

4)合理的な経路及び方法であること

 「合理的な経路」とは、社会通念上一般に通行するであろうと考えられる経路をいう。したがって、無用な遠回りをしてると認められる場合には通勤災害とはされない。

 また、「合理的な方法」とは、社会通念上一般に是認されるであろうと考えられる手段をいう。したがって、会社に申請している交通方法と異なる通勤方法であっても、それが通常の労働者が用いる方法(交通機関や徒歩など)であれば問題ない。反対に、交通禁止区域の通行などは合理的な方法とはいえない。

 

5)業務の性質を有することでないこと

 すでに述べたように、移動途上の災害であっても、その移動行為が業務の性質を有すると認められる場合には、通勤災害ではなく、業務災害の対象となる。

 

逸脱・中断(法73項)

1)原則

 「労働者が、移動の経路を逸脱し、または移動を中断した場合においては、当該逸脱または中断の間及びその後の移動は、通勤としない」とされる。つまり、通勤の途中で移動の合理的な経路をそれたり(逸脱)、通勤とは関係のない行為を行った(中断)場合には、原則としてその時点で、もはや「通勤」とは認められない。ただし、些細な行為を行うにすぎないと認められる程度であれば、「逸脱・中断」とみなされない。

 

2)例外

 「逸脱または中断が、日常生活上必要な行為であって一定のものをやむを得ない事由により行うための最小限のものである場合には、当該逸脱または中断の間を除き、通勤とする」とされる。つまり、一定の必要行為をやむを得ず行うための最小限度の逸脱・中断の場合は、逸脱・中断の「後」について「通勤」とされる。