業務災害(法7条1項)
■業務災害の認定
「労働者の業務上の負傷、疾病、障害または死亡」を「業務災害」という。「業務災害」と認定されるためには、業務に内在する危険有害性が具現化したと経験則上認められること(「業務起因性」)が必要だが、職業病などの特殊的な場合を除き、その前提として、労働者が使用者の支配下にある状態(「業務遂行性」)にあると認めなければならない。
■業務遂行性が認められる場合
では、どのような場合に「業務遂行性」があると認められるか、その主な例を挙げると、次の通り。
1:作業中(風水害の異常気象下の作業や事業主の私用を手伝う場合を含む)
2:用便・飲水などの生理的行為による作業中断中
3:作業の関連・付随行為中
4:作業の準備・後始末・待機中
5:緊急事態・火災などに際しての緊急行為中
6:事業所施設内での休憩中
7:出張中(住居と出張先との間の往復を含む)
8:通勤途上であっても、業務の性質が認められる場合
9:運動競技会などに参加中であっても、業務の性質が認められる場合
※業務上負傷または疾病が再発した場合にも、業務上の負傷または疾病の連続として、保険給付の対象となる。
■業務起因性が認められない場合
上記にあげた「業務遂行性」が認められる場合であっても、「業務起因性」が認められない場合もあり、それは、主として次のような場合がある。
1:労働者の積極的な私的・恣意的行為により発生した事故の場合
2:業務に内在する危険有害性が現実化したとは認められないほどの、特殊的・例外的要因により発生した事故の場合
■業務上疾病の認定
業務上の負傷に起因する疾病など、業務上の疾病と推定される疾病については、「厚生労働省令(労働基準法施行規則別表第1の2)」に定められており、原則として、これに基づき業務上の疾病に該当するかどうかを認定(これに基いて通勤による疾病に該当するかどうかをも認定するわけではない)することになっている。
この内、当該厚生労働省令(労働基準法施行規則別表第1の2)の最後(第11号)には「その他業務に起因することの明らかな疾病」と規定され、業務との間に相当因果関係があると認めれる疾病について、包括的に業務上の疾病として扱うこととしている。
また、第8合には「長期的に渡る長時間の業務その他血管病変などを著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む)もしくは解離性大動脈瘤又はこれらの疾病に付随する疾病」が、第9合には「人の生命に係る事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える自称を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病」が掲げられており、これらの認定にかかる通達として、次のものが出されている。
1:能・心臓疾患の認定基準(平成13年12月12日基発1063号)…過労死などの原因となっている脳血管疾患及び虚血性疾患(負傷に起因するものを除く)について、その認定基準を定めたもの
2:心理的負荷による精神障害などに係る業務上外の判断指針(平成21年4月6日基発0406001号)…仕事の失敗、加重な重圧などの心的不可による精神障害及び自殺について、その業務上害を判断する際の指針を定めたもの
※業務上の疾病を定めた「労働基準法施行規則別表第1の2」の最後(第9号)には、「その他業務に起因することの明らかな疾病」と規定されているが、当該疾病が何であるかについて、告示などに具体的に規定されているわけではない。