寄宿舎の自由と自治(法94条)
労働基準法では、「事業の付属寄宿舎」についても、一定の規制に設けている。ここで、「寄宿舎」とは、常態として相当人数の労働者が宿泊し、共同生活の実態を備えるものをいい、「事業の附属する」とは、事業経営の必要上その一部として設けられているような事業との関連を持つことをいう。したがって、社宅や、福利厚生施設として設置されるアパート式の社員寮などは、事業の附属寄宿舎ではない。
かつて「事業の附属寄宿舎」に置いては、寄宿労働者の「私生活の自由」が使用者の不当な「干渉」によって侵害され、種々の弊害をもたらしていた。労働基準法は、この侵害行為を禁止するとともに、「私生活の自由」を確保する手段として、「寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任」に関する使用者の一切の「干渉」を禁止している。
■私生活の自由(法94条1項、昭和22年9月13日発基17号)
「使用者は、事業の附属寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を犯してはならない」とされる。
なお、舎監、管理人、寮母などを置いても、私生活の自由を侵さない限り、本条違反ではない。
■寄宿舎生活の自治(法94条2項、昭和23年5月1日基収1317号)
「使用者は、寮長、室長その他寄宿舎生活の自治に必要は役員の選任に干渉してはならない」とされている。例えば、使用者が役員の選任についての案を作成するようなことも、本条違反となる。