強制貯蓄(法18条)
会社に雇う条件と社内預金をさせるようなこと(強制貯蓄)は禁止されている。逆にいうと、そのような条件がなく、労働者の委託を受けて社内預金をするようなこと(任意貯蓄)は禁止されていない。ただし、任意貯蓄といっても、労働者の金銭を預かる(管理する)ことには変わりはないので、いくつかの弊害防止規定が設けられる。
■強制貯蓄の禁止(法18条1項)
「使用者は、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。」とされる。いわゆる、強制貯蓄が禁止さている。
■任意貯蓄(法18条2項~5項、則5条2項、則57条3項、平成13年厚労告30号)
「使用者は、労働貯蓄金をその委託を受けて管理使用する場合には、法定の措置をとらねばならない。」とされる。
この労働の委託を受けて行う任意貯蓄には、使用者自身が預金を受け入れて直接管理する「社内預金」の場合と、労働者の名義で金融機関などに貯蓄し、その通帳や印鑑を使用者が保管する「通帳保管」の場合がある。
1)共通の措置
社内預金の場合でも、通帳保管の場合でも、使用者は、次の措置を取らねばならない。
1:労使協定を締結し、行政官庁に届け出る。
2:貯蓄金管理規程を定め、これを労働者に周知させるため作業場にそなえつけるなどの措置をとること。
3:労働者が貯蓄金の返還を請求した時には、遅延なく返還すること
2)社内預金の場合の措置
社会預金(預金の受入)の場合には、九通の措置のほか、次の措置をとらねばならない。
1:貯蓄金管理協定に以下の事項を定めること
1.預金者の範囲
2.預金者一人あたりの預金額の限度
3.預金の利率及び利子の計算方法
4.預金の受入れ及び払い戻しの手続き
5.預金の保全の方法
2:上記1:の事項及びそれらの具体的取り扱いについて、貯蓄金管理規程に規定すること
3:毎年、3月31日以前1年間における預金の管理状況を、4月30日までに、所轄労働基準監督署長に報告すること
4:年5厘以上の利率による利子をつけること
※年5厘以上の利子になるのであれば日歩にすることができる。
3)通帳保管の場合の措置
通帳保管の場合には、共通の措置のほかは、貯蓄金管理規程に、所定の事項(預金先の金融機関名、預金の種類、通帳の保管方法及び預金の出し入れの取次の方法など)を定めておく必要がある。
■貯蓄金管理中止命令(法18条6項、7項)
「労働者が、貯蓄金の返還を請求をしたにもかかわらず、使用者が遅滞なくこれを返還しない場合において、当該貯蓄金の管理を継続することが労働者の利益を著しく害すると認められるときは、行政官庁(所轄労働基準監督署長)は、使用者に対して、その必要な限度の範囲内で、当該貯蓄金の管理を注視すべきことを命ずることができる。この場合、使用者は、遅滞なく、その管理に係る貯蓄金を労働者に返還しなければならない。」とされる。