適用事業の区分
■一元適用事業
労災保険と雇用保険の適用・徴収事務が一元化して行われる事業を、一元適用事業という。
■二元適用事業(法39条1項、則66条)
「次の事業については、闘技事業を労災保険に係る保険関係及び雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなして徴収法を適用する」とされており、これらの二元適用事業においては、労災保険の適用・徴収事務と雇用保険の適用・徴収事務を別々に行う。
1:都道府県及び市町村の行う事業
2:都道府県に準ずるもの及び市町村に準ずるものを行う事業
4:農林、畜産、養蚕又は水産の事業(船員が雇用される事業の除く)
5:建設の事業
※国の行う事業は、労災保険に係る保険関係が成立する余地がないので、二元適用事業にならない。
趣旨(法1条)
「労働保険の保険料の徴収などに関する法律は、労働保険の事業の効率的な運営を図るため、労働保険の保険関係の成立及び消滅、労働保険料の納付の手続、労働保険事務組合などに関し必要な時効を定めるものとする」とされる。
雑則など
■時効(法74条)
失業など給付の支給を受け、又はその返還を受ける権利及び不正受給による失業など給付の返還命令又は納付命令により納付をすべきことを命ぜられたと金額を徴収する権利は、2年を経過したときは、時効によって消滅する。
■書類の保管(則143条)
事業主および労働保険事務組合は、雇用保険に関する書類を、原則として、その完結の日から2年(被保険者に関する書類にあたっては4年)保管しなければならない。
■報告などの命令(法76条1項)
行政庁は、被保険者もしくは受給資格者などもしくは教育訓練給付対象者を雇用し、もしくは雇用していた事業主又は労働保険事務組合もしくは労働保険事務組合出会った団体に対して、雇用保険法の施行に関し必要な報告、文書の提出又は出頭を命ずることができる。
※行政庁は、「雇用保険法の施行のため必要がある」と認めるときは、当該職員に、被保険者、受給資格者などもしくは教育訓練給付対象者を雇用し、もしくは雇用していた事業主の事業所又は労働保険事務組合もしくは労働保険事務組合出会った団体の事務所に立ち入り、関係者に対して質問させ、又は帳簿書類の検査をさせることができる(法79条)(したがって、二事業に関しても当該立入検査などを行うことができる)。
■罰則(法83条)
事業主が次のいずれかに該当するときは、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる。
1:被保険者に関する届け出をせず、又は偽りの届け出をした場合
2:被保険者となった又は被保険者でなくなったことの確認の請求をしたことを理由として、労働者に解雇その他不利益な取り扱いをした場合
3:報告又は文書の提出命令に違反して報告をせず、もしくは偽りの報告をし、又は文書を提出せず、もしくは偽りの記載をした文書を提出した場合
4:離職者などが失業など給付を受けるために必要な事業主の証明書の交付を拒んだ場合
5:立入検査における行政庁職員の質問に対して答弁をせず、もしくは偽りの陳述をし、検査を拒み、妨げ、もしくは忌避した場合
※事業主の場合とほぼ同様の罰則規定が、労働保険事務組合についても設けられており、違反があった場合には、労働保険事務組合の代表者又は代理人、使用者その他の従業員に対して、同様の罰則が適用される(法84条)。
不服申立て
■労審法による不服申立て(法68条)
1)審査請求及び再審査請求(法69条1項、2項)
「被保険者となった又は被保険者でなくなったことの確認、失業給付に関する処分又は不正受給による失業など給付の返還命令又は納付命令の処分に不服のあるものは、雇用保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のあるものは、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる」
また、「審査請求をしているものは、審査請求をした日の翌日から起算して3ヶ月を経過しても審査請求についての決定がないときは、当該審査請求に係る処分について、決定を経ないで、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる」
2)不服理由の制限(法70条)
「被保険者となった又は被保険者でなくなったことの確認に関する処分が確定したときは、当該処分についての不服を当該処分に基づく失業など給付に関する処分についての不服の理由とすることができない」
3)訴訟との関係(法71条)
「被保険者になったこと又は被保険者でなくなったことの確認、失業など給付に関する処分又は不正受給に関する失業など給付の返還命令又は納付命令の処分の取消の訴えは、当該処分についての再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経た後でなければ、提訴することができない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りではない」とされる。
1:再審査請求がされた日の翌日から起算して3ヶ月を経過しても裁決されないとき
2:再審査請求についての裁決を経ることにより生じる著しい損害を避けるため緊急の必要があるときその他その裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき
■行政不服審査法による不服申立て
日雇労働被保険者の任意加入の認可申請に対する不認可の処分など、「被保険者となったこと又は被保険者でなくなったことの確認、失業など給付に関する処分及び不正受給による失業など給付の返還命令又は納付命令」以外の処分について不服がある場合には、厚生労働大臣(公共職業安定所長が処分庁であるときは都道府県労働局長)に対して審査請求を行う。
※「日雇労働求職者給付の不支給処分」については、「雇用保険審査官」に審査請求を行うことができるが、「日雇労働被保険者の任意加入の不認可処分」については、「雇用保険審査官」に審査請求を行うことができない。
費用の負担
■国庫負担
1)給付金の負担(法66条1項、法67条前段、法附10条)
給付費用に関しては、次のような負担割合の国庫負担が行われている。
日雇労働求職者給付金及び高年齢求職者給付金以外の求職者給付(広域延長給付受給者に係るものを除く)
>>4分の1の100分の55
広域延長給付受給者に係る求職者給付
>>3分の1の100分の55
日雇労働求職者給付金
3分の1の100分の55
雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金及び高年齢再就職給付金を除く)
>>8分の1の100分の55
2)事務費の負担(法66条6項)
「国庫は、毎年度、予算の範囲内において、雇用保険事業の事務の失効に要する経費を負担する」とされ、事務費については、全て国庫が負担している、
■保険料(法68条)
二事業
■二事業の概要(法62条~法65条)
「政府は、被保険者、被保険者であったもの及び被保険者になろうとするもの(以下「被保険者など」)に関し、失業の予防、雇用状態の是正、雇用期間の増大その他雇用の安定を図るため、雇用安定事業を行うことができる」とされ、次の事業主に対して必要な助成及び援助を行うこと、その他被保険者などの雇用の安定を図るために必要な事業が実施されている。
1:景気雇用の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合において、労働者を休業させる事業主その他労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずる事業主
2:労働者の再就職を促進するために必要な措置を講ずる事業主
3:高年齢者などの雇用の安定を図るために必要な措置を講ずる事業主
4:雇用に関する状況を改善する必要がある地域における労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずる事業主
2)能力開発事業(法63条1項)
「政府は、被保険者などに対し、職業生活の全期間を通じて、これらのものの能力を開発し、及び向上させることを促進するため、能力開発事業を行うことができる」とされ、次のようなものが実施されている。
1:事業主などの行う職業訓練を進行するために必要な助成及び援助
2:公共職業能力開発施設などの設置運営など
3:再就職を容易にするための職業講習などの実施
4:有給教育訓練休暇を与える事業主に対する助成及び援助
5:公共職業訓練等の受講の奨励
6:技能検定の実施に対する助成
■二事業の助成金など
1)特定就職困難者雇用開発除助成金(則110条)
特定就職困難者雇用開発助成金は、雇用安定事業の助成金である特定求職者雇用開発助成金(当該助成金は、特定就職困難者雇用開発助成金及び緊急就職支援者雇用開発助成金から構成される)の一種で、次のいずれかに該当する65歳未満(5:及び6:に該当するものにあっては、原則として45歳以上65歳未満)の求職者を、公共職業安定所又は職業紹介事業者(6:にあっては、公共職業安定所)の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して、賃金の一部を助成するもので、これらのものの雇用期間の増大を図ることを目的としている。
1:60歳以上の高齢者
3:母子家庭の母など
4:中国残留邦人など永住帰国者であって、永住帰国後5年未満のもの
5:北朝鮮拉致被害者であって、永住意思決定後5年未満のもの
6:各種求職手当所持者など
7:公共職業安定所長が就職が著しく困難であると認めるもの
※特例就職困難者雇用開発助成金は、短時間労働者として雇いれた場合でも支給される。
2)雇用調整助成金(則102条の3)
雇用調整助成金は、雇用安定事業の助成金として給付され、景気の変動、産業の構造の変化などに伴い、事業活動の縮小を余儀なくされて休業、教育訓練又は出向を行った事業主に対して、休業手当、賃金又は出向労働者にかかる賃金負担額の一部を助成するもので、失業の予防を目的としている。
※二事業の助成金などの支給対象事業主は、中小事業主に限られているわけではない。
離職理由による給付制限
■離職理由による給付制限(法22条1項、法36条3項、法37条5項、法37条4,5項、法40条4項、法41条1項)
被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合には、待期期間の満了後1ヶ月以上3ヶ月位以内の間で公共職業安定所長の定める期間(原則3ヶ月)は、求職者給付(日雇労働求職者給付金を除く)は支給されない。
ただし、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける期間及び当該公共職業訓練等を受け終わった日後の期間については、特例受給資格者である場合を除き、この給付制限は解除される。
※被保険者が結婚に伴う住所の変更により、通勤のために所要往復時間が概ね4時間以上となったために退職した場合は、これを理由とする給付制限は行われない。
■給付制限に伴う受給期間の延長(法33条3項、則48条の2)
離職理由に夜給付制限を行った場合において、給付制限期間に21日及び所定給付日数を加えた期間が1年(所定給付日数が360日である受給資格者にあっては、1年に60日を加えた期間)を超えるときの基本手当の受給期間は、当初の受給期間(特例により延長された場合は、その特例により延長された受給期間)に当該超える期間を加えた期間とされる。